スウェーバック姿勢とは? 骨盤を立てるだけでは改善しないのはなぜ?
スウェーバック姿勢とは?
骨盤を立てるだけでは改善しない理由
それらとは別に、横から見ると猫背のように見えるけど少し違った特徴を持つ姿勢があります。
それが「スウェイバック」と呼ばれる姿勢です。
ポイントは骨盤がどちらに傾いているかだけでなく、骨盤と胸郭の位置関係にあります。
スウェイバックは骨盤が後ろに倒れているだけではない
スウェイバック姿勢は骨盤が上半身の真下にあるのではなく、骨盤が前に突き出たような位置になります。
そして胸郭(肋骨と背骨で出来ている胸まわりの部分)は骨盤よりも後ろ側に残ります。
横から見るとこんな特徴が見られます。
全体としては前側に体重を移動し、前のめりにならないように上半身を後ろに引いてバランスを取っている感じの立ち方です。
壁に背中をもたれ掛かって立つときの感じに近いかも。
この「上半身が後ろへ骨盤が前へ」という説明は、姿勢評価の教科書として長く使われている Kendall らの書籍に由来するもので、多くの研究論文もこの記述を引用しています(文献1)。
つまり測定から導かれた定義というより多くの人を診てきた臨床観察から生まれた分類です。
ここで重要なのが
骨盤の傾き(前後どちらに倒れているか)と骨盤の位置(前後どのあたりにあるか)は別のもの
だということです。
骨盤が後傾していても骨盤そのものは前に出ている、ということが起こります。
なので、「後ろに倒れているなら前に起こせばいい」というほど簡単な問題ではないです。
なぜ腰の反りが少なく見えるのか?
スウェイバックを横から見ると、腰の反りが少なく腰がまっすぐ平らになっているように見えたりします。
でも実際は違います。
痛みのない若い方30名の立ち姿勢をセンサーを背骨に貼って測定した研究があります。
そこではスウェイバックの方とそうでない方で腰全体の反りの大きさには差がありませんでした。
差があったのは「腰のどこが反っているか」という場所の違いのほうでした。
スウェイバックの方では腰の上のほう(みぞおちの裏あたり)は平らになり、腰の下のほう(ベルトの位置あたり)は逆に反っているという傾向が見られました(文献2)。
つまり
腰全体が丸くなっている
のではなく
腰のすぐ上あたりまで丸くなっているから腰の上のほうが平らに見えるけど、腰の下のほうは反っている。
これを裏づけるような実験もあります。
健康な方20名に立ったまま胸郭だけを前後に平行移動してもらい、レントゲンで背骨の形を撮影した研究です。
胸郭を後ろへ動かすと背中の丸みが約10°増え、みぞおち辺りの背骨が丸まる方向へ、腰の下のほうは反る方向へ変化しました。
背骨全体もゆるいS字になり、骨盤の傾きも一緒に変わっています(文献3)。
腰を動かしたわけじゃないのに、胸郭の位置を変えると腰と骨盤まで変化したということです。
そういう傾向があるという受け止め方が適切で全ての人に当てはまる訳ではありません。
それでも腰だけ見て腰が丸いと判断するのではなく、胸郭と骨盤を含めた全体の位置関係を見たほうが良いという方向性は、複数の研究から支持されていると考えてよさそうです。
脚の付け根や膝はどう関係する?
スウェイバックは骨盤が前に出るので、脚の付け根(股関節)は相対的に伸びきった位置になりやすくなります。
膝も伸びきって(過伸展)、骨盤・股関節・膝の全部を使って身体を後ろへ反らせるような立ち方になることがあります。
健康な方15名に、「骨盤を後傾し、上半身を骨盤より後ろに引いて股関節と膝を伸ばしきる」というスウェイバックの姿勢で歩いてもらった研究があります。
結果は普段の姿勢で歩いたときと比べて脚が後ろに流れる角度が大きくなり、脚の付け根の筋肉(腸腰筋など脚を前に持ち上げる働きをする筋肉)にかかる負担も大きくなったことが報告されています(文献4)。
つまりスウェイバックは「骨盤だけの問題」ではなく、骨盤・股関節・膝・背骨を含めた身体全体の立ち方として見る必要があります。
「姿勢の形」と「筋肉の働き」は同じではありません
ここでよくある誤解についてお伝えします。
股関節が伸びている=お尻の筋肉をしっかり使っている
ではないことがあります。
骨や関節がどの位置にあるかと、筋肉がどれだけ働いているかは、まったく別のことです。
見た目の形から筋肉の働き具合を読み取ることはできません。
では実際に何が測られているのか?
筋肉が働くときに出るわずかな電気を拾う検査(筋電図)を使った研究では、次のようなことが報告されています。
・健康な方27名を対象にした歩行の研究で、スウェイバックの姿勢で歩くと、普通に歩いたときと比べて、腹直筋(いわゆる腹筋)と外腹斜筋(脇腹の表面側にある筋肉)の働きが高かった(文献6)
このように姿勢が変われば働く筋肉も変わることは確認されています。
でも大切なのはココからです。
これらは健康な方に一時的にその姿勢を取ってもらって測定したものです。
このどちらが先かはまだ分かっていません。
卵が先か鶏が先か…
なので、この姿勢だからこの筋肉が弱いと決めつけて特定の筋トレをするのではなく、その人の身体の動かし方を確認する必要があります。
胸郭が後ろで頭は前?という不思議な関係
スウェイバックで特徴的なのが頭が前に出ているように見えることです。
頭が前に出ているなら後ろに引けばいいと思うかもしれません。
でもよく考えてみて下さい。
スウェイバックって頭が乗っている土台である胸郭が後ろに下がってますよね?
だから
土台(胸郭)は後ろ
↓
その土台に対して頭は前
という位置関係になります。
つまり、横から見て頭が前に出ているのが原因とは限りません。
土台が後ろに下がった結果として頭が前に出るしかなくなる。
(試してみると面白いですよ!)
頭だけを後ろへ引こうとするんじゃなくて、なぜ頭がその位置になるのか?
を考える事が大切です。
そこで「肋骨パカーン」が関係することも
ここで以前ご紹介した「肋骨パカーン」の話にもつながります。
スウェイバックのような姿勢では、胸郭の形や位置が変わります。
人によっては下のほうの肋骨が前に浮き出て見える、「リブフレア」のようになる場合もあります。
しかし
スウェイバック=リブフレア
ではありません。
リブフレアという言葉自体がスウェイバックのように姿勢の分類として広く認識されているわけでもありません。
肋骨が開いているから悪い、肋骨を締めればスウェイバックが治る、と簡単に考えないことも大切です。
大切なのは肋骨をいつも下げて固定しておくことではなく、胸郭が必要なときにちゃんと動かせるかどうかです。
胸を張ると肋骨が前に出ることも…
スウェイバックの方が姿勢を良くしようとして
背筋を伸ばそう
胸を張ろう
と頑張りガチです。
でも胸椎(胸のあたりの背骨)を反らす動きが苦手な状態で胸を張ろうとすると、動かしやすい腰を反らせて補ってしまう(代償動作)ことがよくあります。
そうなると腰を反らせながら胸を前へ突き出すような姿勢になり、結果として下のほうの肋骨が前に浮き出ます。
いわゆる「肋骨パカーン」です。
リブフレアがある方すべてがこの動き方をしているわけではなく、見た目だけで原因を決めつけず実際に身体を動かして確認することが大切です。
では、何を改善すればいいのでしょうか?
ここ、テストに出ます(笑)
スウェイバックと分かっても「骨盤を前に起こす」「胸を張る」「頭を後ろに引く」と決めつけるのは良くないです。
まず確認したいのはその姿勢から自分で別の姿勢や動きに移れるかどうか?
たとえば次のようなことを見ていきます。
動かせても立つといつも同じ姿勢に戻ってしまうのであれば、実際に立った状態や日常の動作の中で身体の使い方を練習する。
必要に応じて筋力トレなども組み合わせる。
このように姿勢の形だけではなく、その姿勢からどう動けるのか?を見ることが大切です。
姿勢を良くするとは、形を固定することじゃない
姿勢について考えると、正しい姿勢をずっと保つイメージがある方も多いのではないでしょうか?
私たちは一日中同じ姿勢でいるわけではありません。
座る、立つ、歩く、かがむ、腕を上げる。
そのたびに身体の各部分は動きます。
なので本当に確認したいのは
きれいな姿勢を作れるか?だけではなく、必要なときに姿勢を変えられるか?
ということです。
ここで姿勢と痛みの関係についてお伝えします。
10代の766名を対象に横から撮った写真で立ち姿勢を分類した研究があります。
そこでは良い姿勢の人に比べ、何かクセがある姿勢の人のほうが腰痛を訴える割合が高い傾向がありました(15項目の分析のうち7項目で統計的に意味のある差)(文献7)。
集団として見れば姿勢と腰痛に関連があるという報告は確かに存在します。
これはあくまで集団の傾向です。
ある人の「この姿勢だからこの痛みが出ている」という原因と結果を示したものではありません。
同じような姿勢でも痛みが無い方もいらっしゃいます。
猫背でも肩こりの無い人もいますしね。
ですので、スウェイバックだからと言って「問題のある身体」ということにはなりません。
ただし、肩こりや腰痛、首のつらさ、長時間立っているときの疲れなどがあって、姿勢も気になっているのであれば身体全体の位置関係と動き方を確認してみる価値はあります。
まとめ
スウェイバックを「直すべき形」として見るのではなく、身体がどうやってバランスを取っているのかを見る。
そして、その方に必要な動きを少しずつ身につけていく。
それが無理に胸を張ったり腰を反らしたりしない、自然な姿勢につながっていきます。
ご自身の姿勢や動きの状態を確認したい方は、一度専門家に見てもらうことをおすすめします。
- Kendall FP, McCreary EK, Provance PG, et al. Muscles: Testing and Function with Posture and Pain. 5th ed. Lippincott Williams & Wilkins, 2005.
- Shin SS, An DH, Yoo WG. Assessing the effects of sway-back posture on global and regional spinal sagittal angles using inertial measurement units. Journal of Back and Musculoskeletal Rehabilitation, 2023. doi:10.3233/BMR-220072
- Harrison DE, Harrison DD, Janik TJ, et al. How do anterior/posterior translations of the thoracic cage affect the sagittal lumbar spine, pelvic tilt, and thoracic kyphosis? European Spine Journal, 2002. doi:10.1007/s00586-001-0350-1
- Lewis CL, et al. Effect of posture on hip angles and moments during gait. Manual Therapy, 2015. PMID: 25262565
- O'Sullivan PB, Grahamslaw KM, Kendell M, et al. The effect of different standing and sitting postures on trunk muscle activity in a pain-free population. Spine, 2002;27(11):1238-1244.
- Changes in Trunk Muscle Activity during Unilateral Weight Bearing and Abnormal Postural Gait in Healthy Individuals. Medicina, 2022;58(12):1800. doi:10.3390/medicina58121800
- Smith A, O'Sullivan P, Straker L. Classification of sagittal thoraco-lumbo-pelvic alignment of the adolescent spine in standing and its relationship to low back pain. Spine, 2008;33(19):2101-2107.
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